海保博之「自己表現力をつける」(知のノウハウ)

日本経済新聞社

1997年刊



 最近、「思い込み」をいかになくすか?

を考える中で、海保さんの他の著作

 「「ミス」をきっぱりなくす本 (成美文庫) 」

が新刊で平積みされていたので手に取りました。

 そして、この本の元になった、

「失敗を「まあ、いいか」にする心の訓練 (小学館文庫) 」
 
が面白くて、本書を手にしました。

 メタ認知の重要性を再認識させられるものでした。



≪メタ認知は、認知活動のなかでもきわめて重要な役割を果たしている。

 もし、これがなかったら、人は、自ら知識を求める活動はしなくなって

 しまうはずである。

 ・・「まだ、自分に知らないことがある」ことを認識できるからこそ、

 勉強に励む。そして、その勉強の方向も見当がつくことになる。≫




≪自己発見の王道は、自分を客観視すること≫

 自分を客観視するための方策・・

1.心の動きに注意を向ける

2.内省する習慣をつける

3.知らないこと/できないことを知る






○気持ちを解放する表現のための5カ条

1.ともかく表現する

2.おしゃべりネットワークを作っておく

3.言い切ってみる

4.表現を形式化する

5.あえて仮面表現も使ってみる

 ・・らしさ、ふりをしてみる




<目次>
プロローグ 自己表現百態
1章 自己表現とは何か
2章 思いを説明する
3章 思いを説得する
4章 気持ちを主張する
5章 気持ちを解放する
6章 自己を作る
エピローグ 個性的な自己表現を
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海保博之「誤り」の心理を読む (講談社現代新書)

1986年刊



 許されない誤り・・システムを破壊してしまうような誤り、一人の命を奪ってしまう誤り、

 社会を大混乱に陥れるような誤り。

 でも、そうでなければ、積極的に生きる限り、

 人は「誤り」を犯すし、「誤り」を通して学ぶことができる。



 「誤り」の効用・・

 ・誤ったたまに、たまたま良いことが起こった。

  ex.電車に乗り遅れたおかげで、昔の友人と出会えた。

     試験の日付を一週間早いと勘違いしたおかげで、十分に勉強ができた。


 ・誤りのおかげで、「逆境への耐性」ができた。


 ・誤ったおかげで、緊張から解放された。

  

 ・誤りが、逆に何が正しいかを際立たせてくれる。



 ・誤りを許容する雰囲気が、「いきいき生きる」ことにつながる。

  「誤らせよ。さすれば人はいきいきと活動する」










<目次>
第1章 「誤りゼロ」は健全か
(誤りのイメージ
誤りの昨今
誤りとは)
第2章 「誤り」を科学する
(誤りを分類する
誤りはなぜおこるか)
第3章 「誤り」と人間類型
(誤りをおかしやすい人
人の誤りが許せない
誤りに弱い人、強い人)
第4章 いきいき誤る
(なぜ誤ると良いのか
いきいき誤るために
誤りを自分で管理する)
第5章 「正解」を考え直す
(誤りをあいまいに考えてみる
正解を考え直す)


中尾政之「なぜかミスをしない人の思考法」(知的生きかた文庫)

三笠書房

2013年刊



 昨年後半に発生したシステムトラブルの真因分析の中で、

 よく耳にしたのが、「思い込み」という言葉でした。

 数年前ならば、「思い込み」を真因として終わりにできたのでしょうが、

 いまは、「それではなぜ思い込んだのか?」

 「どうすれば、何をすれば、思い込みは排除できるのか?」

 と重ねて問われます。

 
 そんな問いを前にして、手に取ったもの。

 以前、単行本で出されている中尾さん文庫化されたものでした。

 構成変わっているので、こちらの方が読みやすいと思います。



 事故やトラブルなどの失敗を生み出す3つの原因・・

1.無知

 ミスを防ぐためのルールや対策があることを知らない。

 法律でセーフティー・ネットや安全着用義務があることを知らないので、使わない。

2.無視

 面倒がるなどして、基本ルールを無視する。

 法律があることは知っているけれども、作業がやりにくくなるので、使わない。

3.過信

 「私にかぎって落ちたりしない。大丈夫だ」と考えて、使わない。


 無知・無視・過信は、「失敗の三悪人」である。


 中尾さん行った調査によると、

 無知は35%、無視は9%、過信は17%で、総計61%が、失敗の三悪人であった。


 『続々・実際の設計 - 失敗に学ぶ』による失敗原因の分類・・

○個人レベルの原因

 無知 解決方法はむずかしくない。

 1.知識不足
  一般的な技術として既に確立しているにもかかわらず、
  本人とその周辺のみが知らなかったため引き起こされた失敗。

 2.伝承不足
  企業または組織としては、既に解決済みでその対処法が確立されているにもかかわらず、
  本人がその話をしなかったために引き起こされた失敗。
 
 解決策は、学べばよい。


 不注意 ヒューマンエラーを防ぐには

 1.理解不足
  表面的な理解に留まり、本質が理解できていなかったために引き起こされた失敗。

 2.注意・用心不足
  本人は知識もあり、本質も理解しているにもかかわらず、
  忙しさや面倒くささで十分な注意を払わなかっために引き起こされた失敗。

 3.疲労・体調不良 
  疲労・体調不良のために注意力が散漫になったために引き起こされた失敗。 


 手順の不順守 身勝手な行動は命取り

 1.連絡不足
  決められていた、あるいは行うべきであった連絡を怠ったり、
 その内容が十分な情報を含まなかったりしたために引き起こされた失敗。

 2.手順無視
  検討や連絡などで、公式、非公式に定められている手順や方式を守らなかったために
  引き起こされた失敗。

 作業手順をマニュアルとして文書化したり、作業確認のコミュニケーションを密にすること
 が大切である。

 誤判断 中途半端な知識を信じない

 1.狭い視野
  物事や起こっている事象を一面的にしかとらえられず、
  あるいは他の出来事や事象との関連がとらえられず、
  検討・判断するときの考える範囲が狭く、考慮すべき要素が欠落したために
  引き起こされた失敗。

 2.誤った理解
  起こっている事象やその背景にある作動原理、あるいは構造などがわからなかったために
  引き起こされた失敗。

 3.誤った認知
  構造、機能あるいは事象などについて、本質的には正しい理解はしているのだが、
  実際の検討や行動に当たり、思い違いなど間違えた認識をして引き起こされた失敗。

 4.状況に対する誤判断
  何が起こっているか正しくわからなかったために引き起こされた失敗。
 
 一つの事柄を決定するときには、起こりうるさまざまな状況を想定し、
 その結果を頭の中でシミュレーションする必要がある。
 

 調査・検討の不足 地道な予防策が必要

 1.仮想演習不足
  系あるいは装置全体として、実際に使用あるいは運転することを想定して、
  各種の条件を変動させた結果何が起こるかというシミュレーションが不足したことで
  引き起こされた失敗。

  レビューをするレビューアーに、その知見がなかったケース。

 2.事前検討不足
  系あるいは装置を構成する個々の部品や薬品、制御に関して、機能、安全性、運転特性
  などの事前検討・調査が不十分であったために引き起こされた失敗。

  障害時の影響調査時に、機能性に注目したが、性能面や運用面への考慮が漏れたケース。

 設計時に、調査・検討に手を抜かない。
 調査はつまらない作業であるが、手を抜いてはならない。

 大規模システムの場合、現行システム分析の調査そのものに、付加価値を認めて、
 必要な工数・工期を確保する必要がある。


○組織レベルの原因

 企画不良 スタート地点にある落とし穴

 1.権利構築の不良
  特許などの権利を取得できなかったり、他者が所有したために
  必要十分な権利が構築できず生ずる失敗。

  外国製のプロダクトやパッケージ・ソフトを導入後、製品そのものの不良にも
  かかわらず、修正パッチが提供されず、また遅いため、
  ワークアラウンドを行うため、機能面の制約や性能面などの品質劣化が起こるケース。

 2.組織構成の不良
  組織構成が、事業の推進や発生する課題などに適合できずに生ずる失敗。

  組織とビジネスの不一致から、機会損失を起こすケース。

 3.戦略や企画の不良
  企画や計画そのものに問題がある失敗。

  ビジネス構築のライフサイクルの工程間で、担当する人や組織が異なる際に、
  断絶するケース。
  システム・コンサルタントが調査した基本構想書を、鵜呑みにして
  基本計画工程以降を進め、頓挫、やり直しとなるケース。

 下工程の担当者は、上工程の検討結果を、批判的な目で受け取ること、
 もし実装・運用目線で問題がある場合、ゼロベースで見直すこと。


 価値観不良 自分の常識は、誰かの非常識?

 1.異文化への理解不足・不適応
  生活習慣の違いや、心情の違いなど価値観が周りと食い違い、
  自分の異なる文化に対して理解・適応することができないために引き起こされる失敗。
  
  オフショア開発での、時差、長期連休の違い、冠婚葬祭・・

 2.組織文化不良
  組織内ルールを優先して公のルールをなおざりにしたり、
  社会に対する責任の不在、強すぎる上意下達、横断的連絡の不在などの組織文化が
  原因で引き起こされたと思われる失敗。
  
  「大企業病」的な体質を持つ組織ならば、どこにでもある。

 3.安全意識不良
 「安全は事業所の仕事、安全管理部の仕事」といった意識、
  安全管理部は規則を作り管理監督をすれば事足りるといったような、
  他人任せの意識が原因になって引き起こされた失敗。

 既知の失敗を防ぐ方法を、組織運営ルールの中に埋め込むことと、
 ビジネスの進展・変化に合わせて、組織運営ルールを見直し続けること。
 そして、それを順守できるレベルのものとすること。

 
 組織運営不良 ミスが起こりやすい組織とは

 1.運営の硬直化
  縦に長い組織だと、組織構成員の責任と権限が不明確で問題事項が先送りされない。

  良い組織は、悪い情報が素早く伝わる組織。  

 2.管理の不良
  トップの指示が現場まで伝わらない、現場の状況がトップがしらない、
  上司が部下を放置したり適切な指示をしない、現場をみないなど、
  管理側の問題が原因で引き起こされた失敗。

 3.構成員の不良
  部下が報告を上げない、勝手な判断で行動する、勉強する意欲がないなど、
  主に管理される側の問題が原因で引き起こされた失敗。
  
 4.環境調査の不足
  使用環境や経済環境などに対する調査が計画当初に不十分だった、
  あるいは計画検討中に状況が変化しているのにフォローが不十分だったり、
  不適切な調査に終わったために起こった失敗。

  
 
○個人・組織のどちらの責任にもできない原因

 環境変化への対応不良 時代はどんどん流れていく

 1.使用環境の変化

 2.経済環境の変化


○誰の責任でもない原因

 未知 完全な想定外も起こりうる

 1.未知の事象発生
 
 2.異常事象の発生


 
「あれ、何か変だな」という感覚を大切にする。

 現地・現物・現人で裏取りする癖をする。 
 

「小さなクレーム無視が”地雷原”になる」

 その理由は、わずか1件のクレームの後ろには、

 クレームをいわない96件以上の不満がある。


「人のせいにしない人」は、ミスが少ない。


≪弁解、言い訳、責任転嫁をいくらしたところで問題は解決しない。

 問題を解決するには、真っ向からこれに取り組むことから始めるべきである。


 自分に非はなかったか? 

 -自分自身が当事者になって分析することなしに、

 問題点の把握、対策、改善、改良、革新はありえないのである。≫


≪失敗は起こりうるものだが、それに対して最善、次善の手は打てる。


 労働災害の専門家によれば、

 経営者などのリーダーが意識して安全管理に取り組んでいるか否かで、

 罹災率は3倍も違ってくるそうである。≫

 リーダーがミス防止に強い関心をもっているだけで、
 
 3分の2の失敗は消える。





<目次>
1章 ミスをしない人の「基本ルール」―失敗の発生源を知っておく(教訓の法則 人の失敗は「最高の教科書」になる―気乗りしない報告ほど、重要度が高い
油断の法則 「大丈夫」と思ったときこそ、丁寧に動く―「失敗の3悪人」をどう追放するか ほか)
2章 致命的なミスを先回りして防ぐ方法―この“サイン”を見逃すな!(予兆の法則 「まさか!」を芽のうちに摘み取る―「最初の予兆に気づく」カギ
自信過剰の法則 自分勝手な“カイゼン”命取りになる―マニュアルの意味を理解できているか ほか)
3章 ピンチで力を発揮する人の条件―起きてしまったミスへの最善策(リーダーの法則 非常時に、「人の上に立つ器」が試される―江戸時代にあった「失敗学」の書
誠意の法則 “逃げも隠れも嘘もない”姿勢を示す―いざというとき、喜んで犠牲を払えるか ほか)
4章 ミスを将来の財産にする考え方―できる人は、転んでもただで起きない(試行錯誤の法則 常識にしがみつくと、本質を見失う―「現場」×「データ」で分析する
一極集中の法則 “イチかバチか”のギャンブルに乗らない―“世界一の営業マン”の思考法 ほか)
5章 ミスの起こらない「仕組み」をつくる―失敗の芽を元から絶つ!(構造の法則 “マニュアル”はいつも破られるためにある―「精神論」だけでミスはなくならない
過剰適応の法則 成功事例を追いかけると、かえって危険―“天の邪鬼”発想をするメリット ほか)


芳賀繁「事故がなくならない理由(わけ): 安全対策の落とし穴」(PHP新書)・・リスク補償行動

2012年刊






≪安全対策がどのような成果を上げるのか、あるいは上げないのかを決めるのは、

 その安全対策によって人間の行動がどのように変化するのかにかかっている。

 これは工学の問題ではなく心理学の問題なのである。≫


 ABSがあるため、車の危険な運転が増えた。


 立派な防潮堤があったおかげで、津波から逃げ遅れた。 


 雪山は危険だということは登山家なら、だれでも知っている。
 
 でも、ビーコンを持っていたら、雪崩に巻き込まれたとき助かる、と思われたので、

 従来近づかなかった場所にも立ち入るようになり、さらに事故が増えた。


 禁煙を考えていた人が、低タールのタバコが発売されたおかげで、

 やめなくていいと思う人が増え、かえって喫煙率が減らなくなっている。


 まさにシェークスピアの『マクベス』のセリフ、

 「安心は人間の最大の敵である」
 
 である。



 人間がこのような行動をとるのは、

「リスク補償行動」という性質があるから。


≪リスク補償行動とは、

 低下したリスクを埋め合わせる行動が変化し、

 元のリスク水準に戻してしまうことをいう。≫



 工学的対策で、リスクが減れば、人間はリスクを高める方向に行動を

 変化させるリスク補償行動をとり、

 長期的には事故率が元の水準に戻ってしまうという

 リスク・ホメオスタシス理論がある。


 このような人間の行動に対しては、

 安全への動機づけを、いかに行い続けるか、にかかっている。





<目次>
第1章 安全装置が裏目に出るとき
第2章 失敗は訓練で防げない
第3章 リスク・ホメオスタシス理論
第4章 なぜ人はリスクを求めるのか
第5章 なぜ事故が起きるのか
第6章 リスク認知とリスク判断
第7章 リスク・コミュニケーション
第8章 リスク行動の個人差
第9章 リスクと共存する


芳賀繁「事故がなくならない理由(わけ): 安全対策の落とし穴」(PHP新書)

2012年刊






≪安全対策がどのような成果を上げるのか、あるいは上げないのかを決めるのは、

 その安全対策によって人間の行動がどのように変化するのかにかかっている。

 これは工学の問題ではなく心理学の問題なのである。≫


 ABSがあるため、車の危険な運転が増えた。


 立派な防潮堤があったおかげで、津波から逃げ遅れた。 


 雪山は危険だということは登山家なら、だれでも知っている。
 
 でも、ビーコンを持っていたら、雪崩に巻き込まれたとき助かる、と思われたので、

 従来近づかなかった場所にも立ち入るようになり、さらに事故が増えた。


 禁煙を考えていた人が、低タールのタバコが発売されたおかげで、

 やめなくていいと思う人が増え、かえって喫煙率が減らなくなっている。


 まさにシェークスピアの『マクベス』のセリフ、

 「安心は人間の最大の敵である」
 
 である。



 人間がこのような行動をとるのは、

「リスク補償行動」という性質があるから。


≪リスク補償行動とは、

 低下したリスクを埋め合わせる行動が変化し、

 元のリスク水準に戻してしまうことをいう。≫



 工学的対策で、リスクが減れば、人間はリスクを高める方向に行動を

 変化させるリスク補償行動をとり、

 長期的には事故率が元の水準に戻ってしまうという

 リスク・ホメオスタシス理論がある。


 このような人間の行動に対しては、

 安全への動機づけを、いかに行い続けるか、にかかっている。





<目次>
第1章 安全装置が裏目に出るとき
第2章 失敗は訓練で防げない
第3章 リスク・ホメオスタシス理論
第4章 なぜ人はリスクを求めるのか
第5章 なぜ事故が起きるのか
第6章 リスク認知とリスク判断
第7章 リスク・コミュニケーション
第8章 リスク行動の個人差
第9章 リスクと共存する

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