池内紀「本は友だち」

みすず書房

2015年刊



 杉浦日向子さんの描く江戸情緒・・

 
 「おとないさん」

 玄関に人の気配がしたのに、出てみると誰もいない。

 オトナイは「訪い」かもしれない。池内さんの幼い時の記憶が甦る。

≪ふとした一瞬が人をみまう。

 日常のなかにフシギをみる一瞬であって、そのあとすぐ日常にもどったのに、

 百日のちにもまざまざと覚えている。

 十年のちにも昨日のことのように思い返すことができる、

 ひそかな運命の贈り物であって、受け取るにも拒むのも人それぞれの意思のまま。

 江戸のころ、人々はそれをつつましく受けた。

 拒むより先にすでに決まっていて、だからこそ意味深い一瞬として大切にし、

 心の奥にしまっておいた。


 それが近代合理主義の名のもとに迷信として退けられた。

 心理学がせせら笑い、精神分析学が心の奥まで踏みこんでくる。

 そして理由のない恐怖や不安を放逐した。

 そのはずであるが、同時に人はなんとゆたかな世界を失ってしまったことだろう。≫




 杉浦日向子さんの『百物語』『百日紅』・・『杉浦日向子全集』

 再び手に取ってみようと思います。


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<目次>
1 会いたい人と会うように
江藤文夫 (1928-2005) / 杉浦日向子 (1958-2005) / 辻征夫 (1939-2000) /
池田晶子 (1960-2007) / 森浩一 (1928-2013) / 岡本武司 (1935-2002) /
木田元 (1928-2014) / モラエス (1854-1929) / チャペック (1890-1938) /
メネトラ親方 (1740-1812) / 須崎忠助 (1866-1933) / 中尾佐助 (1916-1993) /
坂崎重盛 (1942-)

2 あの頃のこと
昭和の物語 / 替え歌 / 学童服 / 浪曲 / ちゃぶ台 / 中廊下 / 家の神 /
温泉 / アパート / 時代劇 / 昔話 / 巡礼

3 山と川と花と
川魚 / サル / 山びと / 野の花 / 植物の「こころ」 / うるし / 御蔵島 / 漂流記 / 空

4 ともに考える
ヒトラー / ドイツ・1936年 / 虐殺の証言 I / 虐殺の証言 II / ユダヤ女性 /
「白バラ通信」 / 放射能 / 加藤周一 / 日本国憲法

5 解説をたのまれて
『漱石の長襦袢』 / 『挨拶はたいへんだ』 / 『日本の秘境』 / 『残夢整理』 / 『交遊録』 /
『文林通言』 / 『単線の駅』 / 『三田の詩人たち』 / 『素白随筆遺珠・学芸文集』 / 『耄碌寸前』

あとがき
とりあげた本の一覧
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《中央公論社》池内紀私はこうして読書をたのしんだ 【中古】afb

池内紀「私はこうして読書をたのしんだ」

中央公論社

1994年刊




 宮本輝の『ドナウの旅人』に対して・・

 たとえば、小説の新聞連載をはじめるについて、取材旅行をしよう、と思う。

 女性の新聞記者が同行し、行く先々で通訳がついたとする。

 あなたは「いいなあ」と思うかもしれない。


 ところが、池内さん曰く、

 ≪とんでもない。

  何がいいものか。

  小説の腹案をかかえて旅行するなど、大石を首っ玉にぶら下げて
  うろつきまわるようなものである。

  なにしろ、あらゆるものが自分と無関係ではないのだから。

  目にするもの、耳にするところ、手で触れたもの、
  往き合わせた風景、町のたたずまい、人々のしぐさ、
  ことばつき、口にした料理、お天気、風のぐあい。≫


 ・・ああ、やだやだ。

 自分のお金で自由に旅するのが、一番ですね~
 




<目次>
1 この人のこの本(ことばは沈黙に、光は闇に〈小川未明〉
悪い奴ほどおもしろい〈野尻抱影〉
「阿房列車」に乗って〈内田百ケン〉
ことばの小宇宙〈白井喬二〉
言霊の手引き〈佐藤春夫〉
歪像とマゾヒストたち〈石川淳〉
もう一つの原作〈神西清〉
窓よ、ひたすら待つ者のよるべきところ〈堀辰雄〉
メランコリーを方法として〈坂口安吾〉 ほか)
2 読書日記から


《河出書房新社》池内紀温泉旅日記 【中古】afb

池内紀「温泉旅日記」

河出書房新社

1998年刊


 

 温泉旅日記・・というものの、

 温泉の記述はほとんどなく、

 温泉地に向かう行程と、温泉で、池内さんが考えたことを書いたエッセイ。




 東京都新宿区の都庁近くの「新宿十二社天然温泉」・・

 なかなか魅力的な記述でしたが、残念ながた閉館(>_<)



 収穫は、

 エーリッヒ・ケストナー「人生処方詩集」小松太郎訳を知ったこと。

 「温泉だより」・・

 どうしてる もう かなりおそい
 ドクトルは さだめし からだにいけないと言うだろう
 噂によると 辻馬車七号の馬が 入浴していると言う
 ここでは 犬さえも 衛生に注意している

 そのうえ 空気まで カフェイン抜きにされている。
 そのため 呼吸は ほとんど危険がなくなっている。
 残念ながら これはまだ まったくなしではすまされない
 むかしは 呼吸なんて じつにかんたんに考えていたものだ・・

  ・・

 いちばんきれいなのは 炭酸泉
 一万の真珠が 肌につく
 まるで 露をむすんだ牧場のよう
 あるいは効くのかもしれない よほど時がたたないとわからない

  ・・

 そのほかに まだ 鉱泉飲用療法もやっている
 水は 甘草汁をかけた鯡の味がする
 ・・


<目次>
会津の雨―木賊温泉
忠治も来た―鳩の湯
小さな町―矢野温泉
五七調の旅―鹿沢温泉
安寿恋しや―湯之沢温泉
ふるさと再訪―塩田温泉
湯の町エレジー―篭坊温泉
眠る町―春日温泉
なおしてくれるぞと勇ましく―寒の地獄
夢を売る男―湯涌温泉
片目の魚―温湯温泉
お告げの湯―佐野温泉
人魚を食う―河内温泉
西洋温気案内―バーデン=バーデン温泉
もう半分―サルソマジョーレ温泉
夏の思い出―イシュル温泉
まぼろしの影を慕いて―メラーノ温泉
龍はいるか?―龍神温泉
札所巡り―松葉川温泉
饅頭こわい―有馬温泉〔ほか〕


【送料無料】 ことばの引き出し / 池内紀 【単行本】

池内紀「ことばの引き出し」

大修館書店

1993年刊




「ハイ」・・

≪<命令は絶対。>

 これが命令の本質である。

 だからこそ命令とは本来いかなるものであるかを考えることができない。

 命令は即座に一つの方向を指し示す。それはピンとのばされた指先のようなものだ。
 
 目はすべて、その方向をむく。
 
 命令にとっては何よりも方向の決定が重要だ。

 
 いかなる疑念も許さない。

 これが命令語の属性である。

 論議や説明の余地がない。≫


≪命令によって行動する人間が、いかに平然と白々しいウソをついても、
 ウソをついたことにならない。

 命令によって行動する人間が、いかに平然と遅るべきことをやってのけたか、
 
 人類の歴史が示している。≫




<目次>
第1部 ことばの森から
第2部 本の森へ
第3部 江戸の本棚
第4部 よくキク本


平凡社ライブラリー 21新編綴方教室/池内紀

池内紀「新編 綴方教室」(平凡社ライブラリー)

平凡社

1993年刊


 
 昨夜リリースしたシステムの本番障害発生(>_<)

 1時間毎に、現場のメンバーと連絡をとりながら、
 6時前に現地に向かう。

 ところが、6時過ぎのお台場は、コミック・マーケットへ向かう
 体の大きなオタク?!のお兄さん、荷物を沢山持って移動する女の子たちで一杯でした。

 メンバー用に差し入れを持って行ったものの、
 完徹で、食欲もなし・・


 いったん区切りをつけて、帰宅したところ。

 いまから少し仮眠をとるところ。




 巻末にある松山巌さんの「解説」より。

≪これは文章読本である。

 文章を綴る気になったら役に立つかもしれない。≫


≪言葉の謎は日常しばしば現れる。
 
 しかし、この謎はあまりに日常的なためについ見落としてしまう。
 池内紀が挑戦するのは、こうした生きた言葉のもつ不思議さについて
 なのである。≫






 一番、印象に残った文章・・


 福沢諭吉「日々のをしへ」より。

≪世の中にむつかしきことをする人を貫き人といひ、
 やすきことをする人を賤しき人といふなり。本を読み、
 物事を考へて世間のために役に立つことをするはむつかしきことなり。
 されば人の貫きと賤しきの区別は、
 ただのその人のする仕事のむつかしきとやすきにによるものゆゑ、
 いま、大名、公卿、さむらひなどとて、馬に乗りたり、
 大小を挿したり形は立派に見えても、その腹の中は空きだるのやうにから空きにて……≫


 福沢諭吉「学問のすすめ 人望論」より。

≪第一 言語を学ばざるべからず。文字に記して意を通ずるは固より有力なるものにして,
文通又は著述等の心掛も等閑にすべからざるは無論なれども,近く人に接して直に我思う
所を人に知らしむるには,言葉の外に有力なる者なし。・・≫

≪第二 顔色容貌を快くして,一見,直に人に厭わるゝこと無きを要す。・・≫

≪第三 道同じからざれば相与に謀らずと。世人又この教を誤解して,学者は学者,医者
は医者,少しくその業を異にすれば相近くことなし,同塾同窓の懇意にても塾を巣立ちた
る後に,一人が町人となり一人が役人となれば,千里隔絶,呉越の観を為すものなきに非
ず。甚しき無分別なり。・・≫






<目次>
彼は美しい女性を抱きしめた―品詞の紹介
私が夫だ―主語の研究
白人ウソツク、白人悪イ―述語をめぐって
娘の婿の忰の嫁―これからの敬語
白のタフタがクラシックで印象的―外来語の功罪
きわめて明快で流麗、この上なく巧みにして…―修飾語の偉大と悲惨
一家三人血みどろ!―感嘆文の効用と限界
いうまでもなく、うそは悪である…―最初の一行
終わりよければ…―最後の一行
コレがアレだ―指示語の使い方
明日雨が降ったら―条件文の条件
イヤダカラ、イヤダ―因果関係の語法〔ほか〕

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