銃口(下)

三浦綾子「銃口 下」(角川文庫)


 1941年の冬休み、1月10日の早朝、治安維持法違反容疑で、

 主人公の北森竜太は問答無用で拘留される、以後7ヶ月間にわたった

 拘置所の中で、退職届の提出を強制される。

 当時、同時期に、北海道を中心に全国から100名以上の教師が思想犯として拘留され、

 のちに、北海道綴方教育連盟事件といわれたもの。

 治安維持法における予防的拘禁の恐ろしさをまざまざと描いています。


 恩師の北森先生は、拷問の後、衰弱死直前に解放されるが亡くなる。
 
 竜太が長い拘留中、北森先生と一度だけ出会う。そこで、かけられた言葉。

 「竜太、自分にとって最も大事なこの自分を、自分が投げ出したら、
  いったい誰が拾ってくれるんだ」

 

 少数意見の尊重は、思想の是非以前の問題です。
 
 でも、それがなし崩しに否定されてしまう「空気」は、
 
 いまでも存在します。


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銃口(上)

三浦綾子「銃口 上」(角川文庫)



 昭和10年代、希望に燃えて小学校教師になった北森竜太


 その竜太が教師を目指すことになる小学生時代の恩師は、坂部先生の教え

 「・・宿題を忘れるより、零点を取るより、ずっと悪いのは弱い者いじめだ。・・」


 「竜太、どうしたらいいかわからん時は、自分の損になるほうを選ぶといい。

  大体それがまちがいないと思うよ」

 「自分が得をするようなことに出会った時は、人間試される時だと思う。

  得をしたと思って喜んでいたら、大いに誤るということがある。

  人間、利には目がくらむものだ」


  不幸と不運は異なる。
  重い肺病病みでも、いつも顔が照り輝いている人もいれば、
  軽い肺病でも、朝から晩まで我が身の不運を嘆いて過ごす人もいる。
  できれば、前者でありたい。
 



三浦綾子「なくてならぬもの 愛すること生きること」(光文社・知恵の森文庫)

 三浦綾子さんの講演8編を収めたもの。

 


 黒柳朝さんの言葉・・
 
 「素晴らしいものはみんなタダ」

 ・・神の愛、人の愛、太陽の光、風、慈雨



 吹田の川谷牧師の言葉・・
 
 「不機嫌を自分で直せないのは、
  大人のすることじゃない。
  大人じゃない証拠です。」

  機嫌を取られなきゃ機嫌よくなれないというのは子供であるޥ



 絶望しちゃいけない。

 人間、絶望するということは、本当に自分を生かさないですね。

  ・・肺結核とカリエスで、13年間の病床、
    うち、ギプスベッドに4年間

  一日一日生きているうちに、13年間が過ぎた。



「私たちは、どんな人も、その人の人生においては、
 その人が主人公、自分自身が主人公だと思うのです。
 この地球が始まって以来、地球が終わるまで、私と、あるいは
 あなたと同じ人は、絶対にこの世に現れません。
 あなたと同じ人は一人もいない。
 あなただけしかいない。
 ということは、あなただけをつくられた神様がいらっしゃる。
 その神様は、何かをあなたにさせようとしていらっしゃるということを、
 私は、これを本気で信じていただきたいと思います。」
 



<目次>
なくてならぬもの
生きるということ
聖書と私の小説
愛すること信じること
ちいろば先生のことなど
私と小説
むなしさの果てに
今、何を求めるか



三浦綾子「ナナカマドの街から」(角川文庫)



 榎本保郎牧師の『新約聖書一日一章』より

 「肝臓が悪い人は、肝臓の悪くない人が羨ましい。

  しかし、私は肝臓が悪くないと言って、喜びにあふれている人を見たことがない。」


 
 あなたへのささやき・・

 「この世に生まれて、ころんだことのない人は、一度もない筈です。
  ころんで起きなかった人は、一人もない筈です。
  さあ、あなたも立ち上がって歩き始めませんか」

 「人間は得意の絶頂にある時に、自分の姿をさらけ出すものです。
  あなたの喜び方は、泣いている人を考えての喜びでしょうか」

 「あなたは今夜、何をして過ごすつもりですか。
  今日という日は二度と来ません。
  どうしても、今あなたの考えるとおりに今夜を過ごすべきだと思いますか」

 「そうです。私は戦争反対者です。
  どこの国の人間なら殺していいと、神はおっしゃいましたか」

 「祖国日本、という言葉はもうやめましょう。
  祖国地球、と言いましょう。宇宙時代というのですから」



岩に立つ

三浦綾子「岩に立つ」 (講談社文庫)



 「七十年といやあ長いようだが、過ぎてみりゃあ、全くの話 人生の束の間でさあ。」


 旭川一、いや北海道一の腕前を持つといわれた鈴木新吉という大工の棟梁の半生を描く。

 やくざを前にしても、軍隊においても筋を曲げず、

 特高につけねらわれると、逆に、警察署長に談判しにいく・・姿が素晴らしい。

 

 「人間、言うべきことを言う気になって、がりっと言えば、

  非道な相手も引っこむもんですよ。

  だが日本人は、勇気がない。「長いものには巻かれろ」ですよ。」
   
  その空気が、日本の軍隊と警察を作った。


 三浦綾子さん読んだ中で、一番痛快な物語でした。


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