藤原新也「なにも願わない手を合わせる」(文春文庫)




 藤原さん、父、母、そして兄が他界する毎に、四国にお遍路へ行くといいます。

 でも、それは儀礼行為ではない、といいます。



≪私個人は「死者の魂」とは私の心の中に居残っている死者への想い、

 という風に捉えており、そういう姿で死者はそれを思う人々の魂の中に

 生きていると思っているのである。≫






<目次>
顔施
童眼
老い歌
なにも願わない手を合わせる
安らかなり
古い時計
犬影
色食是空
死蝶
菜の花電車
人生のオウンゴール
水に還
春の猫
まなざしの聖杯
富士を見た人
垂乳根
東京物語

無音
夢の技法
営みの花
春花考
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藤原新也「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」(河出文庫)




 「尾瀬に死す」「カハタレバナ」・・

 なにげに読み始めて、ドキッとしました。





「あじさいのころ」・・


≪写真家というものは、その一瞬一瞬、

 世界の誰よりも被写体に対し深く入り込まねばならない。

 しかし引きずってはならないのだ。

 入り込みながらもなにくわぬ顔ですみやかにその場所から

 立ち去るのだ。

 そして何事もなかったかのように次の女性や風景にまなざしを向ける。

 それはある意味でむごいことなのだが、

 そんな過程を経ながら写真は進化するものなのだ。≫






<目次>
尾瀬に死す
コスモスの影にはいつも誰かが隠れている
海辺のトメさんとクビワとゼロ
ツインカップ
車窓の向こうの人生
あじさいのころ
カハタレバナ
さすらいのオルゴール
街の喧騒に埋もれて消えるくらい小さくてかけがえのないもの
トウキョウアリガト
世界でたったひとつの手帳に書かれていること
六十二本と二十一本のバラ
運命は風に吹かれる花びらのよう
夏のかたみ


藤原新也「渋谷」(文春文庫)





 渋谷のスクランブル交差点・・

 一日に50万人が往来し、
 10万台の車が行き来する。

 
 渋谷の匂い・・

 安物の合成香水が発するのは、蟻酸の匂い。

 谷になっているすり鉢状の都市空間は、アリ地獄を連想させる。



 田舎から出てきたばかりだと、息苦しくなって過呼吸になり、

 騒音に頭が痛くなる。

 でも、渋谷に限らず、東京全体の歩き方がある。

≪無方向な騒音も、受けとめ方というか、神経を180度裏返せば

 混乱もひとつの和音、いや真空状態になる。

 いやそれは心地よいノイズというべきかもしれない。

 その膨大なノイズに意味がないからこそ、人はその中に埋没し消える

 ことができるんですね。

 ちょうど自然の中で自分の存在が消えるようにです。

 神経の持ち方によっては都市も自然と同じように癒しの場となるように

 思うんです。≫

 ・・車のクラクションや街宣車の騒音は馴染むことはできませんが、

 周りの煩いおしゃべりや電車の中で、読書は驚くほど進むので、

 ノイズの中の真空ってあると思います。



<目次>
0 おねがいわたしをさがして
1 母親に罵声のひとつも浴びせて君の名は
2 仮面の朝と復讐の夜
3 君の眼の中の色彩
平成幸福(しあわせ)音頭

藤原新也「平成幸福(しあわせ)音頭」

文藝春秋

1993年刊




 藤原さんの猫ネタは好きですね~

 本書でも、千葉の家で体験した、帰巣本能のある猫たちの姿など、

 印象的なエピソードが紹介されていました。






 都美術館が、美大生の間で、「死体置場」と呼ばれていた、とは(>_<)


≪入るとただの巨大な箱になっていて、まるで棺桶に入ったかのように

 ひんやりしたからである。

 もう一つはそれが死体置場といわれる所以は実際に死体が累々と置かれていた
 からである。

 絵や彫刻の死体である。

 芸術家が団体展という階層社会を形成する自己管理組合の一員になると、

 すぐにそれは死に体になる。

 そしてやはり死体のような絵を描くものなのだ。


 都美術館は建て替えられ、外観は変わったが中に入ると空気は昔を同じだった。

 相変わらず死体が発する冷気が漂っている。≫
 





<目次>
ベランダからの眺め
平成幸福音頭
スピル・オーバー
立ち枯れの身体
正しい食卓
ボケの社会学
叙情天気予報
拈華微笑


藤原新也「西蔵放浪」(朝日文芸文庫)






坊さんという存在・・

≪仏門に入ったり、僧になったりするのは、

 命の炎を消して、醒めた営みの中に入るということではなく、

 一つの炎を消して体内に別の炎を灯すということだと思う。

 僕は別の形式の炎で輝いている一個の人間をそこに見たかったのだが・・。≫





ある部落で出会った老人の言葉・・

≪若い者で、ここに残った者は、気のふれたもんか、病人くれえなもんだ・・

 あとは小さな子供か、わしみたいな老いぼれか、老いぼれの面倒を見ている娘っ子くれえなもんだ・・≫




そんな貧しい村でも、来世にいくためのお金を貯め込み、やりとりしている。

その姿を見て、藤原さんの心中は・・

≪あんた、・・心配いらんよ。

 今、俺たちが住んでいる世の中にゃ、あんたたちの言う来世の世界、

 地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天上、ひと通り何でもそろってるんだ。

 きっと、ここは来世なんだよ・・ここが来世でなきゃ、

 何であんたという人間の頭の上にあんな真青な天国が見えていて、

 何であんたの足元に虫けらや犬っころが寝転がっているだろう。≫





<目次>
第1部 潮干の山越えて
第2部 天の宴

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