私が語り伝えたかったこと [ 河合隼雄 ]
河合隼雄「私が語り伝えたかったこと」

河出書房新社

2014年刊





 やる気になって遅いということはない・・

 元気の秘訣は何か?
 
 と問われて、

≪やっぱり好きなことをしていることだと思います。

 好奇心が旺盛だから、やりたいことがいっぱいあるわけです。

 これもやりたい、あれもやりたいでしょう。

 それを、あれやらにゃいかん、これやらにゃいかんというふうに思って生きているから。

 僕のモットーは「好きなことしかしない」

 「やらなければならないことは絶対好きになってみせる」というんです。

 本当にやらにゃいかんことを好きになろうと思ったらなれるんです。

 絶対におもしろいことがありますから。≫




 
 お金よりも心を与えること・・

≪魂が震えるというのは大変なことですよ。

 人間というのはずるいので、大変なことはやめておこうと思う。

 そういうときに一番役に立つのがお金です。

 お金があったらそんなに震えなくともいいんですよ。≫

 
 でも、「心をもらわないで金をもらうというのは、子どもが悪くなる最悪の方法」である。

 子どもに車を買い与えたりするのは、成金のすること。

 アメリカの本当の金持ちは、そんなことはしない。

 「子どもに何でも買い与えたらろくなことはないとわかっている。
  子どもたちもわかっているから、すごい金持ちの子が必死でアルバイトをして、
  ほしいものを買う。」 



 労働者の権利と働くこと・・

≪労働に喜びを感じているのだったら、そうじゃなくてできるだけ労働を少なくしようと思う

 労働者だったら、何のために労働をしているのかという疑問が生じますよ。≫






 日本人にとっての宗教・・

≪宗教はあくまで個人のものである。

 あくまで自分とのかかわりにおいて-自分の死も含めて-

 世界をいかに見るかということである。

 しかし、既に述べたようにそれは同じ宗教に属する宗教集団となっていく。≫

 ・・宗教集団において安心感は得られる一方、集団化することにより、集団の組織化や組織防衛
 の観点から、本来の個人のあり方に圧力が加わる。

 
だから、

≪現在における宗教の必要性を認めるにしても、それをすぎに特定の宗教や宗派に結びつけることなく、

 あくまで個人としての宗教性を深めることを重要と考えてみてはどうであろうか。≫


≪現代に生きようとする個人は、時分にふさわしい神話を見出さねばならない、

 というよりは、神話を生きると表現した方がいいであろう。

 出来合いのものを探し出すのではなく、体験を通じてつくり出していくものなのだ。

 それは限りなく孤独な道である。

 しかし、神話を生きることによって他とのつながりができてくるのも事実である。

 それは有難いことであるが、少し気を許すと安易な集団化のなかに埋没することになる。≫




<目次>
未来への記憶のつづき
アイデンティティの深化
子どもの心と現代の家庭
これからは父親の出番
日本の教育の底にあるもの
“教師の力”いま、求められるもの
やらねばならないことは好きになってみせる
こころの自然破壊を防ぐ
夢の中の「私」
私の養生術
日本の心と文化
かくて「般若心経」は、現代人の心を癒す
現代人と宗教―無宗教としての宗教
音とこころ
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河合隼雄の幸福論
河合隼雄の幸福論

PHP研究所

2014年刊




≪そもそも「幸福」とはなんだろうと考えさせられる。

 病気の人は健康な人が幸福と思っている。

 お金のない人はお金をたくさん持っている人が幸福と思っている。

 あるいは社会的な地位が高ければ高いほど幸福の度合いも増える
 と思っている。

 しかし、果たしてそうだろうか。≫


≪「幸福」というのは、何だかイジの悪い人物のようで、

 こちらから熱心に接近していくと、上手に逃げられるようなところがある。≫


≪要は、かけがえのない自分の人生を、いかに精一杯生きたかが問題で、

 それが幸福かどうかは二の次ではないか。

 あるいは一般に幸福と言われていることは、たいしたことではなく、

 自分自身にとって「幸福」と感じられるかどうかが問題なのだ。

 地位も名誉も金も何もなくても、心がけ次第で人間は幸福になれる。≫

 ・・といってしまえば、ひとまず終わりですね(^^♪




 人間が幸福であると感じるための条件は・・

 1.将来に対して希望がもてる

 2.自分を超える存在とつながっている、あるいは
   支えられていると感じることができる

 この2点が実に重要であると、河合さん思っています。



 あと、時間の使い方・・

≪現代人の生き方の難しいところは、時間に従って行きながら、

 それに縛られたり、追いかけられたりしない、ということであろう。

 その対策のひとつとして、時には「時間を忘れ」たり

 「時間にこだわらない」生き方をする「時」をうまく確保することであろう。≫





≪「我を忘れる」ことは、しかし、怖いことだ。

 これができるためには、自分を投げ出しても「大丈夫よ」と抱きとめてもらう経験を

 もっていないと駄目である。≫

≪私は人生のなかで「我を忘れる」体験を一度もしない人は不幸な人だと思う。

 自分という全存在を何かに賭けてみる。

 そのことによってこそ、自分が生きたと言えるのではないだろうか。≫





 
 河合さん、58歳で、2週間に一度、先生について、フルートを学び始めます。

≪フルートはピアノと違って、一度に一つの音しか出せない。≫


≪そのときに鳴っていない音が大切なのである。

 しかし、考えてみると、このことは人間関係でも大切ではなかろうか。

 人間の口は一つだから、一度にたくさんのことは言えない。

 たとえば、「悲しいです」としか言えない。しかし、これをメロディーと考えると、

 同じ「悲しいです」の下に、いろいろな和音があり、それによって随分と味が変わるはずであり、

 そこには言われていない和音を聴くことが非常に大切ではなかろうか。

 音のない音に耳を傾ける態度が、他人を深く理解するのには必要であると思われる。≫



≪人間の幸福というものもこのようなものだろう。

 幸福の絶頂にあるようなときでも、それに対して深い悲しみ、という支えがなかったら、

 それは浅薄なものになってしまう。≫





<目次>
幸福とは何か
モモの笑顔
兄弟
子育て
何を伝えるのか
感謝の言葉
常識
人生の後半
幸福の効率計算
儀式〔ほか〕
河合隼雄著作集13
河合隼雄著作集13 生きることと死ぬこと

岩波書店

1994年刊



「中年の危機と再生」・・

≪人生を生誕より死に到るひとつの軌跡としてみるとき、中年はその軌跡を転回点として

 大きい意味をもっている。

 人生の軌跡を日の出より日没に到る太陽の運行になぞらえるならば、

 中年とは上昇してきた太陽がこれから下降に向かう時点である。≫



≪中年の意義に目を閉じてそそくさと行きすぎようとする人々の足をとどめ、

 内省の機会をうながすものがある。

 それは何か定かではない。≫

 ・・当人には、中年の危機として体験される。



≪日常の生活にもはや意味を見出せなくなったとき、

 人は非日常的な空間にそれを見出す工夫をしなくてはならない。

 この世に対するあの世、あるいは常世の国へ渡るためには、

 人は死を体験しなくてはならない。≫



≪心理学において「適応」ということが重視されたが、それも、

 いかに生きるかという点からのみ適応の問題が考えられ、

 いかに死ぬかという適応観に欠けていたと私は反省している。

 死にゆくものとしての自分の適応をわれわれは真剣に考えねばならない。≫




≪もし生きることの苦痛をすべて除くことができたとすれば、

 われわれは老いてから死にゆくことの不安や恐れともろに直面することに

 なるのを覚悟しておかねばならない。≫






<目次>
序説 生きることと死ぬこと
生と死の接点
象徴としての近親相姦
青年は母性的社会に反抗する
若者文化と宗教性
イデオロギーの終焉再考
青年期の生き方について
夫婦の危機をどうのりこえるか
働きざかりの落とし穴
中年の危機と再生
老人の知恵
死ぬとはどういうことか
心のリゾート探し
日本人の死生観


【中古】 河合隼雄著作集(第13巻) 生きることと死ぬこと /河合隼雄(著者) 【中古】afb
河合隼雄著作集13
河合隼雄著作集13 生きることと死ぬこと

岩波書店

1994年刊



「働きざかりの落とし穴」・・

≪中年における病いや事故など、マイナスのことでありながら、

 実は次の新しい発展に向かうための踏み台としての意味をもっていることが

 明らかになってきたのです。


 このような点から、「創造の病い」などという人もあるほどで、中年期に生じる、

 つまずきから創造的な生き方がひらけること・・≫がある。



≪ユングは、”人生の後半”を非常に強調しました。

 人生を前半と後半とに分けて、前半の課題と後半の課題を分けて考えたらどうか、

 というのです。

 前半は、自分がこの世にしっかり生きていく、この社会のなかに完全に受け入れられる、

 あるいは社会のなかに貢献するということをやっていくのだけれども、

 次に非常に大事なことは、その自分は死ぬわけですから、いままで夢中で生きてきたけれども、

 自分はいったい何のために生きているのだろう、これからどうなるのだろう、

 いったいどこへいくのか、といった問いかけに対して答える仕事が、われわれの人生の

 後半にあるのではないか、というのです。≫



 また、

≪ユングは非常におもしろいことをいっています。

 自分のところへ相談にきた人の三分の一ぐらいは、社会的に成功もしているし、

 能力もあるし、何もかもできる人だ、と。

 何が悩みというと、実は悩みがないようなところが悩みである。

 つまり、何もかもうまくいっているようにみえながら、いったい自分の本当の

 生きる意味は何か、いまなぜ生きているのか、そういう問題にぶち当たった人である、

 というのです。

 成功のまっただ中で自分を考え直すというよりも、普通は、まっただ中と思っている

 ときに何らかの落とし穴に出会って考え直さざるをえない、という感じになると思います。≫


 たとえば、

≪「生」と「死」でいうと、われわれはだいたい「生」のほうに重きをおいていますが、

 考えてみるとわれわれはみな死ぬのですから、「死」をまったくのマイナスとばかり

 取り上げるのはどうかと思います。≫


 
≪ここで大事なことは、マイナスの事柄を創造の病いとするには、

 マイナスと思っていることのなかに、”意味”を発見し、また自分自身を掘り下げる必要が

 あるということです。

 私、私と知ったようなことをいっているが、本当はわからないところがいっぱいある。

 その私の知らない”私”が、病いを通じて掘り下げられる。≫


 「他人の掘り下げ」や「反省」ではなく、

 「私の掘り下げ」を通すことが、中年期の危機を「創造の病い」とすることができる。





<目次>
序説 生きることと死ぬこと
生と死の接点
象徴としての近親相姦
青年は母性的社会に反抗する
若者文化と宗教性
イデオロギーの終焉再考
青年期の生き方について
夫婦の危機をどうのりこえるか
働きざかりの落とし穴
中年の危機と再生
老人の知恵
死ぬとはどういうことか
心のリゾート探し
日本人の死生観


【中古】 河合隼雄著作集(第13巻) 生きることと死ぬこと /河合隼雄(著者) 【中古】afb


快読シェイクスピア (新潮文庫)

河合隼雄&松岡和子




ロミオとジュリエット・・



 大人になる・・

≪思春期というのは凄まじい時である。

 人間の根底が揺さぶられる。

 大人になるというのは、その根源的な問を上手にごまかすことだとも言える。

 歳をとってもそれができない人を永遠の少年と言う。≫

だから、

≪秘密を上手に持って生きて行ける子はいいんですけど・・≫

 そうでないと、大変になる。



 
ハムレット・・


 「なぜなしに生きる」(マイスター・エックハルト)

≪生きるのに「なぜ」なんてないんですよ。

 生きていること自体がものすごいんであって、

 何かをするために生きているっていうのは、

 ちょっと偽物めいている。≫



 シェイクスピアの作品全編に貫かれているもの・・

 それは、「節をまげない」というか、

 ここだけは譲れないという一線があること。


 それが、シェイクスピアが下敷きにした数々の原作と

 人物も名前もプロットも同じでありながら、

 比べてみると、片方が平板でありながら、

 シェイクスピアの作品には熱い血が通っているという差がでている。


PS

「ロミオとジュリエット」というと、
映画の挿入歌にもある「What Is A Youth?」が耳に残っています。


What is a youth? Impetuous fire.
What is a maid? Ice and desire.
The world wags on.

A rose will bloom
It then will fade
So does a youth.
So do-o-o-oes the fairest maid.

Comes a time when one sweet smile
Has its season for a while...Then love's in love with me.
Some they think only to marry, Others will tease and tarry,
Mine is the very best parry. Cupid he rules us all.
Caper the cape, but sing me the song,
Death will come soon to hush us along.
Sweeter than honey and bitter as gall.
Love is a task and it never will pall.
Sweeter than honey...and bitter as gall
Cupid he rules us all



<目次>
ロミオとジュリエット―なぜジュリエットは十四歳なのでしょう?
間違いの喜劇―双子の運命やいかに
夏の夜の夢―シェイクスピアの眠りと夢と
十二夜―“憂い顔の喜劇”の面白さ
ハムレット―ハムレットの三十年の人生
リチャード三世―悪党は、なぜ興味つきないのでしょう?

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