田中美知太郎「ソクラテス」


 1957年刊なのに、いまだに再版され続けています。
 最近50年間の成果がどういうものかわからないのですが、2400年間のスパンでみると
まだまだ参考になるのでは・・・、なんといっても田中先生だし、と思って手に取る。


1.ソクラテス問題

 「ソクラテス問題」・・とは、

 「ほとんど一体化されているプラトン的ソクラテスのうちから、
  
  いわゆる歴史的ソクラテスを区別し出す」こと。・・技術的に極めて困難。


 「ソクラテスの同じ一面が、ヘーゲルとキェルケゴール、ミルとニーチェでは、

  正反対の解釈と評価を受けている。」


2.ソクラテス像、推測の根拠

 ・プラトンの作品
 ・クセノポンの作品
 ・アリストパネス「雲」
 ・ディオゲネス・ラエルティオス「ギリシア哲学者列伝」
 ・アリストテレスの作品
 ・・その他、喜劇作品


3.生活的事実

 下世話な話として、
  ・ソクラテスの経済状況
    親の世代は裕福。
    晩年は遺産はなくなっていたかもしれないが、生活程度を低くすれば暮らせた。

  ・クサンチッペの悪妻伝説
    「パイドン」ではいたって普通の女性。
    ソクラテスの行動と対比させるため、デフォルメされすぎ。

    まあ、年齢差30以上離れていること考えると、いまどき普通ですね~。ڤ
 

4.ソクラテスの哲学

 「ソクラテスが「精神」(プシューケー)の名で呼んでいるものは、
 
  このような自己自身にほかならないのである。

  もしひとがいのちを失ったなら、全世界を得たとしても、何にもならない・・。

  われわれも、もし自己自身を失ってしまうなら、

  金銭や名誉を、どれほど積み重ねてみても、何の得るところもないであろう。」

 
 ソクラテスにとっての「哲学とは、徳その他について談論によって、

 たえず自他を吟味することに外ならなかった。」

 ご指摘ごもっとも・・・でも、自分自身を失ってから考えようとし始めることがあまりに多い・・。
 
 
4.ソクラテスの死の理由

 「ギリシア哲学者列伝」に、ソクラテスへの死刑の求刑理由が5つあること。

(1)国家の公職を抽選で決めることへの批判。国家制度に対して青年が軽視することを招いた。

(2)ソクラテスと交友関係にあったクリティアス、アルキビアデスが、
   アテナイ国家に大きな害を与えたこと。

(3)ソクラテスは、父親に対して非礼を働くことを教えた。ソクラテスとつきあえば、
   父親より知恵のものにできると説いた。

(4)父親ばかりでなく、他の近親者まで、尊敬するに当たらないものと信じこませた。
   すなわち、病気の時は親よりも医者、訴訟の時は親戚よりも弁護士等に相談せよ、
   といったことが咎められた?!
 
(5)ホメロスやヘシオドスの詩を用いて「弱論強弁的な解釈」を主張した。


 この中で、田中先生の説明だと、2.が一番の理由に思えます。

 スパルタとアテナイの30年戦争=ペロポンネソス戦争、

 一時休戦の状態があったようですが、その戦端を切って主戦論を説き、かつ、シケリアに出兵の後、

 敗北したのは、ソクラテスの愛者であったアルキビアデスであり、

 また、ペロポンネソス戦争がアテナイの敗北に終わった後の三十人政権の中で

 独裁者として振舞ったクリティアスの教育者であったこと・・・と、

 その結果、三十人政権が倒れた後の民主制の政権下、残った人々から

 たぶんに政治的な恨みを買ったためだと思います。


 実際のところは、ソクラテス自身は、三十人政権下での犯人探しの中でも抵抗し、

 あわや死刑を求刑されそうになっていたこともあり、クリティアスの支援者であるということが

 いいがかりであることはわかります。

 
 それでも、ソクラテスの人生の中で、数少ない政治的な接触をした時は、

 常に生命の危機を覚悟する必要があったこと。

 一身の安全のために、正義を捨てるか。

 それとも、正義を守り、正義のために戦うか。

 ソクラテスとって「よく生きる」ことは、不正義の中ではなく、正義の中にあったこと。

 だから、今回死刑を免れても、いずれ避けられないこと。

 従容として死を受け入れたのは、その生き方の結果であったのだ、と。


<目次>
1.何をどこまで知ることができるか
2.生活的事実
3.啓蒙思想の流れに
4.ダイモンに憑かれて
5.デルポイ神託の謎
6.哲学
7.死まで


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克元亮「SEの文章術」・・・文章力から思考力へ


 技評SE新書、第10弾。


 「IT業界の現場では、文章力が不足するばかりに、

  「要件があいまいでテストケースが漏れた」、

  「システム設計書がわかりにくいためプログラムの製造効率が悪い」など、

  品質や生産性のトラブルにつながるケースがよくあります。

  とかく技術力に注目しがちなIT業界ですが、

  より成果をあげるためには、文章力、ひいては、論理的な文章を書くための

  思考力を向上していく必要があります。」

 と、「まえがき」にあるとおり、

  1.正確な文章を書くこと

  2.そのためのスキル=論理的な思考を身につけること

 の大切さとその育成方法を紹介しています。

 特に、後者については、

 「文章の作成スキルが低いことは、一見、言い回しが下手、漢字を知らないなどと

  いった表層的なレベルで捉えられがちです。
 
  しかし実は、情報を論理的に構造化する思考力や読者視点に立つ共感力など

  根本的な部分に問題があることが多い」

 と、思考力・共感力の向上まで視野を広げて説明されており、

 文章術のテクニックだけでないのが、とても良い。


 「スーパーSE」の板倉さんも、

  「読んでわからない文章など、いくら書いてもゴミにすぎない。
   不良品を製造しているのと同様、なんの価値もない」

  「『てにをは』も間違えるようなレベルでは、
    問題の解析や仕様検討などはさせられない」

 とバッサリ言われていたことを思い出しました。まさにその通り!

 でも、いまだに修行中ですね~(このブログも、『てにをは』の誤りだらけだし?!)。


 最後に、参考図書が紹介されていたので、ご紹介・・・

 半分も読んだことないので、また手にとってみようかな。
 

<文章作法>
 「超」文章法 野口悠紀雄 



 理科系の作文技術 木下是雄


 
 「分かりやすい表現」の技術 藤沢晃治



 伝わる・揺さぶる! 文章を書く 山田ズーニー



<思考法>
 考える技術・書く技術 バーバラ・ミント

 

 論理トレーニング101題



 クリティカルシンキング 入門編 ジョンソン&ゼックミスタ



 知的複眼思考法 苅谷剛彦



 ライト、ついてますか ワインバーグ


 → 以前紹介したコメントはこちら

<読書法>
 読書術 加藤周一


 ・・この本、好きな方多いです。加藤さんの本、ほとんど読んだのですが、なぜかこの本だけ好きになれないのですね~。

 ちなみに、私の好きな加藤さんは、こちら・・
  加藤周一「日本その心とかたち」 手に入れました!!!



 SEの読書術 技術評論社編集部編


 → 以前紹介したコメントはこちら
   SEの読書術―「本質を読む」力を磨く10の哲学



藤沢令夫「プラトンの哲学」


 冒頭、プラトン哲学、とりわけ国家論と政治思想を巡って、

 プラトンを全体主義者として攻撃する論者と弁護する論者が入り乱れ、
 
 第一次大戦後から第二次大戦後まで続く「30年戦争」があったこと。

 → 佐々木毅さん「プラトンの呪縛」 


 ただ、そのプラトン像は、プラトンそのものというより、

 アリストテレスのプラトン解釈と、

 ハイデガーのプラトン解釈というバイアスがかかったもの。

 ハイデガーの歴史的知識を通して、リチャード・ローティからジャック・デリダの

 「奇抜きわまる変奏」が生まれた、と手厳しい。

 「新プラトン派の哲学者たちは、事もあろうに、

  「アリストテレスの著作をプラトンの著作への入門の手引きとする」ことを
 
  教育の根本方針とした」という。


 藤沢先生曰く、プラトン自身に帰れ、と。


 また、ソクラテスとプラトンの思想の違いについては、

 プラトン自身、ソクラテスの語った言葉を書き、整理しながら、新しい発見しつつ、

 自身の哲学を深めていったことを考えると、

 「プラトンの対話篇に表明されている思想のうちで、
  これは「ソクラテスの」思想、
  これは「プラトンの」思想と截然と区別して呼び分けられ」はしない。





 プラトンの著作の時期区分
 
 前期対話篇 「ソクラテスの弁明」「クリトン」「エウテュデモス」「プロタゴラス」
       「カルミデス」「リュシス」「ゴルギアス」「ヒッピアス(大)」
       「ヒッピアス(小)」「ラケス」「エウテュプロン」「メノン」

 中期対話篇 「饗宴」「パイドン」「国家(厳密には第二巻以降)」「パイドロス」
       「クラテュロス」

 後期対話篇 「パルメニデス」「テアイテトス」「ソピステス」「ポリティコス」
       「ピレボス」「ティマイオス」「法律」


 
 藤沢先生のプラトン解釈・・

 「イデア」「プシュケー」、そして、哲人統治の理想がありますが、

 とりわけ、「イデア」論が最初からあったわけではなく、

 前期から中期を経て後期までを練り上げていく過程であったこと

 の説明がテキストを基に、説得的に説明くださっています。


 前期対話篇の多くが、アポリアー(行きづまり)に陥ってしまいながら、

 その過程が、のちのイデア的なものが念頭にありながら、

 まだ明確なものになっていない状態でもがいていたこと。

 このイデアが最初に語られたのが「パイドン」であり、

 「国家」における3つのたとえ・・「太陽」「線分」「洞窟」の例で表わされたこと。


 そして、「国家」においてイデア論をひとまず完成させた安堵感・幸福感が漂う

 「パイドロス」・・といいます。

 そうそう、「パイドロス」のこの幸福感、とってもいいです!


 ところが、「パルメニデス」において、このイデア論の欠陥に気づく。

 この容赦ないダメだしの中で、プラトンがイデア論を捨てたという解釈をした人も

 いましたが、決してそうでないこと。テキスト中に、ダメだししたパルメニデス自身

 が、この時点のイデア論がアポリアーにあったとしても、イデアがないといっている

 わけではないこと。

 そして、「テアイテトス」で、知覚を徹底的に分析し、

 その後のイデア論のための基礎固めを図ったのだ、と。 


 「場(コーラ)」の概念、アリストテレスの解釈からは抜け落ちていること。

 ハイデガーの「自然万有」の見方への批判は、ソクラテス以前の哲学・・

 こんにちまで続く「原子」論=<物>的存在至上主義のデモクリトス以前と

 以後を分けて考えず、いっしょくたにしてプラトン批判している、といいます。

 ・・・プラトンこそ、<物>だけでなく、<魂>との一体を指向してはずではないか。



 ところで、

 「ティマイオス」で語られるプラトンのコスモロジー、

 なかなか魅力的です・・・早く読みたいな~。



「オープンソースカンファレンス2007 .DB」のご案内が届いたので、
昨日からの流れでご紹介させていただきます。


 6月23日(土) 10:00 - 18:30、京急蒲田駅の大田区産業プラザにて。

 
 朝一番のセッション、
 『オープンソースDB性能徹底比較! ~Firebird / MySQL / PostgreSQL~』

 聞いてみたいですね~。



以下、引用です。
============================================================================

☆★ セッション事前登録受付開始!! ★☆

「オープンソースカンファレンス2007 .DB」のご案内

============================================================================

2004年から始まり、今回で 13 回目を迎えるオープンソース総合イベント「オープン
ソースカンファレンス」。

昨年初開催し、大好評を頂いた「.DB(ドット デービー)」を今年も開催致します。

「.DB」はオープンソースの中でも“データベース技術”にテーマを限定した、『ス
ペシャルOSC』。

データベース管理者・ユーザーなら知っておきたい、旬の最新情報をお届けします。

皆様のご来場を、心よりお待ちいたしております。

オープンソースカンファレンス実行委員会
──────────────────────────────────────
■□■--【オープンソースカンファレンス2007 .DB】--■□■

★事前登録受付中!(無料)⇒⇒ http://www.ospn.jp/osc2007.db/

※"新規登録"メニューより、セッションおよび懇親会参加の事前登録ができます。
※すでにユーザ登録のみされている方は、"登録変更"メニューより登録できます。

日 時:6 月 23 日(土) 10:00 - 18:30
会 場:大田区産業プラザ (PiO) 小展示ホール(東京・京急蒲田駅東口徒歩 3 分)
主 催:オープンソースカンファレンス実行委員会
共 催:Firebird日本ユーザー会 / 日本MySQLユーザ会 / 日本PostgreSQLユーザ会
参加費:無料(事前登録制)
定 員:300名
内 容:オープンソースデータベース技術の最新動向(展示・セミナー)
──────────────────────────────────────

▼10:00 - 11:30

『オープンソースDB性能徹底比較! ~Firebird / MySQL / PostgreSQL~』

講師:木村 明治(Firebird日本ユーザー会)・堤井 泰志(日本MySQLユーザ会)・
片岡 裕生(日本PostgreSQLユーザ会)

本当はどれが一番速いのか?それぞれの得手 / 不得手は?
各ユーザ会協力のもと、多面的な検証結果を大公開、必見です!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■オープンソースDBアップデート

<お早めにご登録下さい。⇒⇒ http://www.ospn.jp/osc2007.db/register.php >
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼13:30-14:30
『PostgreSQL Updates』

講師:調整中(日本PostgreSQLユーザ会)

新バージョン PostgreSQL 8.3 のベータリリースが近づいてきました。8.1 以降の改
良点をおさらいしつつ、8.3 で予定されている新機能、関連プロジェクトの動向、ま
た国内外の PostgreSQL コミュニティの動きについて、最新動向をお伝えします。

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▼14:30-15:30
『Firebird の最新動向』

講師:加藤 大受(Firebird日本ユーザー会)

最新版の Firebird 2.0.1、現在 α 版がリリース中の Firebird 2.1 の機能紹介お
よび日本医師会 ORCA プロジェクトでの Firebird の活用事例をはじめ、Firebird
を使った事例についてご紹介します。

すでに Firebird を使っている方も、興味がある方も、これからメンテナンスに手間
がかからないシステムを作りたい方にお勧めします。

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▼15:45-16:45
『続:MySQL の日本語問題と解決策(仮称)』

講師:堤井 泰志(日本MySQLユーザ会)

先日の OSC でも取り上げられた MySQL の日本語問題。現状の課題整理から、さらに
積極的な解決策により、快適な MySQL 利用環境を設定/構築する手法をご紹介しま
す。


昨日紹介した、
濱野 賢一朗・鈴木 友峰「オープンソースソフトウェアの本当の使い方」

・・オープンソースソフトウェア、フリーソフトウェアの
理念なり哲学といったところを
あえて外されていたように感じたので、
ちょっと本の紹介。

積読のもので、まだ読んでないのですね~。



リチャード・ストールマンさんの
「フリーソフトウェアと自由な社会 Richard M.Stallmanエッセイ集」

ハッカーズ
 ハッカー文化の最後に、リチャード・ストールマンさんが登場し、最後の灯を消さない
ため孤軍奮闘する様子、思わず応援していました!
 スティーブン・レビー「ハッカーズ」・・・・ハッカー倫理とその現在



リーナス・トーバルズ /デイビッド・ダイヤモンド
「それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実」

 リーナス・トーバルズさん、リチャード・ストールマンさんとちょっと意見が違います。
 そのあたりのことを含めて、こちらをご覧いただければ。
 リーナス・トーバルズ&デビッド・ダイヤモンド「それがぼくには楽しかったから」



グリン・ムーディ /小山裕司
「ソースコードの反逆 Linux開発の軌跡とオープンソース革命」


伽藍とバザール
エリック・スティーブン レイモンド
「伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト」
・・なんで、楽天さんにないの?!





濱野 賢一朗・鈴木 友峰「オープンソースソフトウェアの本当の使い方」

 ひさびさの技評SE新書の新刊、手に取りました。


 非常にわかりやすい、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)の入門書。


 「まえがき」にも書かれていますが、

 最初の3章にて、

 なぜOSSが利用されるのか?、について、

 普及の背景、利用者側・SIベンダー側双方のメリットを押さえ、

 代表的なOSSと実システムへの適用状況を紹介しています。


 第4章以降が、実際にOSSを活用できるシステムの適用範囲を説明しており、

 頭の整理にとても良いです。


 第4章にて、「OSSミドルを採用する際のキーポイント」として、

  1.性能は十分か

  2.信頼性は得られるか

  3.システムの構築・運用に関するノウハウがあるか

 の3つのポイントをクリアしていることを挙げ、

 さらに、「採用を決める際のポイントの最後は、それを使いこなす技術が採用する側に

 あるか」こと、と指摘されています。

 その上で、性能面については、

 DBサーバ(MySql、PostgreSQL)のベンチマーク例が丁寧に説明されています。

 商用ソフト以上に、OSSの性能がチューニングによって大きく左右されること、

 つまり、チューニングのスキルによって適用の幅が大きくことなることが、示されています。

 さらに、スケールアップだけでなく、

 スケールアウトの考察として、MySqlとPostgreSQLのそれぞれのクラスター構成と

 その際のベンチマークの結果も興味深い。

 これらのポイントを押さえて適用を図れば、OSSの適用はとても有効、ということになります。

 
 その一方、OSSの課題もきちんと挙げられており、

 実際、これまでもユーザ部所管の案件には比較的気楽に提案できた一方、

 大規模なシステムへ二の足を踏んでいた理由・・

 逆にいうと、この課題がクリアできれば適用範囲が広がることがわかるので、

 今後、前向きな提案のための整理を積み上げていければ、と思います。


<目次>
第1章 なぜOSSが利用されるのか
第2章 代表的なOSS
第3章 広がるOSSの採用
第4章 OSSミドルはどこまで使えるのか
第5章 OSSの課題
第6章 データで見るOSSの導入実績
第7章 OSSを効果的に活用するには




 佐藤哲也「サラミス」


 「300(スリー・ハンドレッド)」が活躍した

 テルモピュライの戦いの後、

 サラミスにおけるペルシア対ギリシア連合軍の海上の大決戦。

 
 ヘロドトスの「歴史」などを基に、

 「この海戦を、細大もらさず写し取ろうと試み、映画を凌駕する3Dの迫力を実現した、

  ディープな視覚小説とでも呼ぶべき、奇想天外な戦記。」

 とあるとおり、映画のショットを思わせる場面切替え、

 背景描写と登場人物の議論、いきいきとして良かったです。


 ギリシア連合軍、

 スパルタのエウリュビアデスを総指揮官に、

 コリントスのアデイマントス、

 アイギナのポリュクリトス、

 そして、アテナイのテミストクレスら、

 20の国家とその指揮官による合議制。

 意思決定の際は、議論そして票決が繰り返される。

 ・・・たとえ、目前にペルシアの大艦隊が勢揃いしつつあったとしても。


 みな一家言あるのですが、

 やはり出色なのは、テミストクレス!

 海戦に先立っての訓示ですが・・

 まず海戦決定にあたっては、

 「・・・我々は全員が一丸となってギリシアの自由のために戦うが、

  敵はいずれもペルシアの王に隷属する者たちだ。

  仮に勝利を得ることがあっても、その勝利から自由を得ることは決してない。

  自由を賭して戦う者は強い。

  しかし、隷属して戦う者が、同じ強さを発揮することはできなのだ。・・」


 そして、戦闘直前での名演説・・・

 「アテナイ勢の諸君。

  我々がいまここで何を選択すべきなのか、それを決めるのはわたしではない。

  諸君の一人ひとりが決めることだ。・・

  そしてこれが肝心なことだが、諸君が戦いの帰趨を定めると同時に、

  戦いの帰趨によって諸君が何者であるかも定められるということだ。

  それはいったい何者であるのか。

  世の中には困難を前にして立ちすくむ者がいる一方、

  困難に挑んで闘志を燃やす者がいる。

  疲れ果てて逆境にあって悲嘆に暮れる者がいれば、

  そこから這い上がろうと死力を尽す者がいる。・・・

  苦難を前に勇気を示した者は、立派な者として讃えられることになるだろう。

  だが惰弱に走って持ち場を放棄した者は、役立たずとして蔑まれることになるだろう。

  これは、この場に限った話ではない。

  そのときに何者であったかが、その後に何者として見られるかを定めることになるからだ。

  強い者と見られるか、弱い者と見られるか、

  有用な者と見られるか、無用の者と見られるか。

  勝者となって栄誉を掴むか、敗者となって恥辱を浴びるか。・・・


  アテナイ勢の兵士諸君、諸君がよいと思うほうを選べ」


  ・・・選べって、言われても?! 結論決まってるじゃん。ڤ

  「そのときに何者であったかが、その後に何者として見られるかを定めることになるからだ。
 
  蓋し、名言ですね!



 プロジェクトにおいても、評論家は無用。

 「ああすれば良かった」とか、「だからあの時、ああ言ったのに」という言い訳を許してはなりません。

 ・・だったら、そうするようにどう行・言動したのか、ということを
 
 常に問われているのだと思います。



 そろそろ、ヘロドトスの「歴史」を読んでもよいかも・・・

 と思いつつあります。


クセノポン「アナバシス ― 敵中横断6000キロ」

訳は、松平 千秋。



 「アナバシス」って何?

 「敵中横断6000キロ」って・・・なんか凄そう!!

 で、作者が、クセノポン!

 プラトンと並んで、ソクラテスの弟子の一人!

 ということで、読みました。


 事実は小説より奇なり・・・

 冒険小説顔負けのなんとも凄い物語でした。



 時代は、紀元前401年3月から、紀元前399年3月までの2年間のお話。

 ペルシアの大王ダレイオスが病に臥し死期を悟り、

 二人の息子を呼び寄せる。

 兄は、アルタクセルクセス。弟は、キュロス。

 ところで、兄はたまたま父親の元である現イラクにいたが、

 弟のキュロスは、現トルコのエーゲ海側を統治していたため、

 かけつけた時は、父は亡くなり、兄が即位していた。

 弟キュロスとともに駆けつけた腹心のティッサペルネスが、

 新王アルタクセルクセスに、キュロスに謀反の志ありと訴えたため、

 キュロスは捕らえられてしまう。

 この時は、母親のパリュサティスの懇願で釈放し、任地に戻る。


 当然、腹の虫が収まらないキュロス。

 日頃仲良くしていたギリシア人の傭兵を味方につけて、

 兄との決戦を企む。

 しかし、当初はその意図は隠し、周辺の反抗的な部族掃討の名目で出陣する。

 ギリシア人の指揮官は、スパルタから亡命し、ペルシアに庇護されていた

 クレアルコス。このクレアルコス、三度の飯より戦争好き。お金と暇があったら

 ゆっくり休む・・なんていう性格ではなくて、自ら傭兵をやとって周りを平定します。

 
 で、トルコからアルメニア、シリアを経て、イランに入り、

 キュロス軍とアルタクセルクセス軍の決戦。

 キュロス軍は、

  ギリシア重装歩兵1万400、軽装歩兵2500、  
  土着民部隊10万、鎌戦車20台

 アルタクセルクセス軍は、

  120万、鎌戦車200台、騎兵6000



 書評にも書かれているので、書いてしまうと、

 あっさり、キュロスとその腹心たちは命を落とす。

 個別の戦闘では、ギリシア人部隊は善戦し、まだ負けたことを知らない。

 ここまでで、第1巻が終わります?!
 
 全部で7巻構成なので、あとの6巻は、この敵中深くからの撤退戦。

 ・・関が原の島津の敵中突破よりもはるかに遠大です。
 
 「イオニアのエペソスから戦場まで彼らが踏破した距離は、

  93日の行程で535パラサンゲス、すなわち1万6050スタディオンであった。

  戦場からバビロンまでは、360スタディオンであったという」

 単位がよくわからないと思いますが、1スタディオン=約180メートル。

 したがって、1万6050スタディオン=2889キロ。首都バビロンまであと65キロまで迫っていた。


 第2巻において、戦闘においてギリシア人部隊の強さを痛感したペルシア側は、和平を申し出ます。

 ギリシア人指揮官、クレアルコスも、3000キロの退却をペルシアの了解なしにすること困難

 と判断し、クレアルコス自身と隊長を引き連れて、ティッサペルネスへ面会に行く。

 なんと、その陣幕であっさり虐殺されてしまいます。

 この時、虐殺された指揮官の一人が、プラトン対話編「メノン」のメノンでした。

 クセノポン、相当このメノンが嫌いだったようで、散々な悪口雑言が述べられています。

   プラトン「メノン 徳について」


 第3巻、指揮官・隊長を皆殺しにされたことを知って、意気消沈して夕食もとらず

 横になってしまうギリシア人たち。

 「さて、部隊の中にアテナイ出身のクセノポンなる者がいた。」と、ここでクセノポン自身が登場します。

 「俺としたことが、こうして寝ているとは何事か。

  夜はどんどん過ぎてゆく。夜が明ければ恐らく敵がここに来るであろう。

  もしわれわれが大王の手中に陥るならば、あらゆる苛酷な責苦に遭い、

  数々の恐るべき仕打ちを加えられて、汚辱のうちに死ぬ外はあるまい。

  それなのに、いかにしてわれわれの身を守るべきか、一人としてその準備や配慮をしている者は

  なく、われわれは今まるで呑気に構えていられる情況であるかの如く、横になって寝ているのだ。

  それで、そもそも俺はこういう措置をとってくれる指揮官がどこの町から出て来てくれる

  当てにしているのだろう。俺は自分の年齢がいくつになるまで待つというのだ。

  万一今日、自分の身柄を敵の手に委ねることになれば、

  俺はこれ以上年をとるわけにはゆかぬものだものな。」


 この時、クセノポン、30歳ぐらいだった様子。

 クセノポン、年齢の点もあり、明確な指揮官にはなりませんが、

 1万3000余名のギリシア人を、鼓舞する演説を再三にわたって実施し、

 部隊全部の窮地や自身への誹謗から身を守ります。


 言葉による説得がいかに大切であり、有効であることか


 が、緊迫した局面で登場するので、ひりひりするほど強く伝わってきます。


 クセノポン、哲学者というよりも、良き軍人でした。ݤ

プレステージ


 USENさんから試写会のお知らせがあったので、
 
 新宿で、映画「プレステージ」見ました。



 「19世紀末のロンドン。若き奇術師アンジャーとボーデンは、中堅どころの奇術師ミルトンの元で修行をしていた。しかしある日、アンジャーの妻で助手のジュリアが水中脱出に失敗し死亡。事故の原因はボーデンの結んだロープが外れなかったことだった。・・・」
 
 アンジャー役をヒュー・ジャックマン、

 ボーデン役をクリスチャン・ベール、

 マジシャンの助手をしていた妻を殺されたアンジャーが、ボーデンに対する復讐に燃え、

 以降、復讐の連鎖が始まる。


 映画の前に、クリストファー・ノーラン監督から、

 結末は誰にも話さないでください、との字幕がありますが、

 まさに見てのお楽しみ!


 以下、ちょっぴりネタバレ気味なので、ご注意を!


 この映画、大きな画面で見る価値あり、です。

 はっきり言って、一度目だと、謎解きを考える前に、ハラハラして終わってしまいました。

 ちょっと・・というか、だいぶやられた気分一杯です。


 アンジャーの瞬間脱出を謎を暴こうと、ボーデンが舞台裏に踏み込んだ瞬間、

 ボーデンの目の前で、アンジャーが水中脱出に失敗し溺死。

 ボーデンは、アンジャー殺しの罪に問われるところから、

 物語は過去にさかのぼる。
 

 スポーツの試合ではないのですが、

 逆転、逆転、また逆転でした。

 
 最初、登場人物の顔の違いがよくわからなくて、あらあらこれで大丈夫か?ܤ

 と思っていましたが、同じショットが何度も使われるので大丈夫?!ޥ



 ところで、デヴィッド・ボウイが、ニコラ・テスラに扮していました。

 う~む、ひさしぶりに見たら、普通の地味なオジサンになってました?!Ӥä

 ニコラ・テスラは、当時、エジソンの直流電流と対立し、

 交流電流による電力事業を発明した技術者でちょっとエキセントリックなところもあったようなので、

 こだわりの役どころとしては良かったのかもしれません。


ソクラテスとプラトン・・・「プラトン全集」


 「ティマイオス」が未読ですが、

 図書館で予約しましたが、時間がかかりそうなので、

 プラトン・マラソンはいったん終了!ޥ

 これまでのエントリー、まとめてみました。 


岩波書店の惹句・・

「西洋の源には,いつもプラトンという巨峰が聳え立っている.正確にして明快な訳文と詳細にして周到な注解,さらには数年の歳月をかけて完成を見た類のない「総索引」をそなえ,30年以上にわたって揺るぎない評価を確立した決定版全集,待望の復刊.――プラトンには「哲学」のすべてがあり,ここにはプラトンのすべてがある.」

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■構成 全15巻+別巻1
 
 田中 美知太郎,藤沢 令夫 編

〈 全巻の構成 〉

●1巻
 エウテュプロン  今林万里子 訳
 ソクラテスの弁明  田中美知太郎 訳
 クリトン  田中美知太郎 訳
 パイドン  松永雄二 訳

 こちらはどの作品も、文庫本で読みました。

 エウテュプロン  山本光雄 訳
 ソクラテスの弁明  三嶋輝夫・田中享英 訳
 クリトン  三嶋輝夫・田中享英 訳
 パイドン  岩田靖夫 訳

●2巻 
 クラテュロス 名前の正しさについて  水地宗明 訳
 テアイテトス  田中美知太郎 訳


●3巻
 ソピステス  藤沢令夫 訳
 ポリティコス(政治家)  水野有庸 訳


●4巻
 パルメニデス  田中美知太郎 訳
 ピレボス  田中美知太郎 訳


●5巻
 饗宴  鈴木照雄 訳
 パイドロス  藤沢令夫 訳


●6巻
 アルキビアデス I  田中美知太郎 訳
 アルキビアデス II 川田 殖 訳
 ヒッパルコス   河井 真 訳
 恋がたき     田之頭安彦 訳


●7巻
 テアゲス     北嶋美雪 訳
 カルミデス    山野耕治 訳
 ラケス      生島幹三 訳
 「ラケス」は、文庫で読みました。
 ラケス      三嶋輝夫 訳

 リュシス     生島幹三 訳


●8巻
 エウテュデモス  山本光雄 訳
 プロタゴラス   藤沢令夫 訳


●9巻
 ゴルギアス    加来彰俊 訳
 メノン      藤沢令夫 訳


●10巻
 ヒッピアス(大) 美について   北嶋美雪 訳
 ヒッピアス(小) 偽りについて  戸塚七郎 訳
 イオン 『イリアス』について   森 進一 訳
 メネクセノス 戦死者のための追悼演説  津村寛二 訳


●11巻
 クレイトポン  田中美知太郎 訳

 国家  藤沢令夫 訳
 プラトン「国家 正義について」上巻 
 プラトン「国家」 ソクラテス-ケパロスの老人論・お金の効用
 
 プラトン「国家 正義について」下巻・・・初期・中期の総集編


○12巻
<未読>ティマイオス  種山恭子 訳
 ティマイオスはいずこに
 クリティアス  田之頭安彦 訳


●13巻
 ミノス  向坂 寛 訳 法律 上巻  森 進一・池田美恵・加来彰俊 訳
 法律 下巻  森 進一・池田美恵・加来彰俊 訳


●14巻
 エピノミス(法律後篇)  水野有庸 訳

 書簡集  長坂公一 訳
 「書簡集」・・・第一書簡~第三書簡(ディオニュシオス二世に)
 「書簡集」・・・第四書簡~第十三書簡


●15巻
 定義集     向坂 寛 訳
 正しさについて 副島民雄 訳
 徳について   副島民雄 訳
 デモドコス   副島民雄 訳
 シシュポス   副島民雄 訳

 エリュクシアス 尼ヶ崎徳一 訳
 アクシオコス  西村純一郎 訳
  付 文献案内


●別巻
 総索引     藤沢令夫 編
  事項索引
  固有名詞索引
  主要ギリシア語索引
  ギリシア語による項目検索表/諺一覧/年譜/地図


プロチノス「善なるもの一なるもの ―他一篇」・・・一者とは何か


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