博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)
サイモン・ウィンチェスター
鈴木主税 訳
早川書房
2006年刊
OED・・『オックスフォード英語大辞典』の第一版全十二巻の完成には、
70年以上の歳月が費やされた。
1928年に完成し、その後の数年間に5巻に補遺が出て、
さらに半世紀後に第二版が完成。補遺が本体に統合され、全二十巻となった。
総ページ数、1万6570ページ、
用例182万7306にまで達した。
OEDの定義する語は、優に五十万語を超える。
他の辞書と大きく異なるのは、英語の「用例」を徹底的に集め、
その用例を引いて、英語のあらゆる語彙の意味がどのように使用されているか
を示している点にある。
単語の一覧表をつくるには、部分的に重なり合う三つの選択肢がある。
第一は、耳で聞く言葉を記録する方法。
第二は、既存の他の辞書から単語を転記する方法。
第三は、文献を読み、そのあとで読んだすべての単語を記録し、分類し、
一覧表をつくる方法。
第一は、あまりに煩雑。
第二は、辞典編纂者は誰でも既存の辞書を出発点とし、一つの単語も見落とさない
ようにする方法である。
OEDは、第二に加え、第三の選択肢も採用した。
そのために、アマチュアの人たちに、「篤志協力者」として無給で仕事を
してもらった。
その一人であったウィリアム・チェスター・マイナーは、
毎週100枚を優に越えるカードを送り、一日に20枚にも達した。
<目次>
1 深夜のランベス・マーシュ
2 牛にラテン語を教えた男
3 戦争という狂気
4 大地の娘たちを集める
5 大辞典の計画
6 第二独房棟の学者
7 単語リストに着手する
8 さまざまな言葉をめぐって
9 知性の出会い
10 このうえなく残酷な切り傷
11 そして不朽の名作だけが残った
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