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リバース・イノベーション

ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル

訳 渡部 典子

解説 小林 喜一郎

ダイヤモンド社

2012年刊



 上海に着任当初は、日本のソリューションをいかに中国に取り入れるかを考えようとしていましたが、

 最初の3か月で方針転換・・

 近頃は、中国発世界へのソリューションを構築を考える日々です。




本の惹句より・・

≪もはや先進国からの単なる輸出で勝てる時代ではありません。
 
 新興国で成長した「新興国の巨人」が先進国に攻めてくる前に、新興国でイノベーションを起こして、新興国市場を攻略し、その勢いを利用してグローバル市場へ展開する必要があるのです。≫


そして、本文から・・


≪時代は変わった。

 途上国はもはや辺境の地ではなく、経済の中心である。

 今後20年にわたって、世界経済の成長の三分の二以上が途上国からもたらされると見込まれている。≫

 これまで、先進国の企業は、自国で作り出した製品をそのまま海外へ売るか、マイナーなカスタマイズをすれば

売れると思っていた。しかし、この前提はもはや通用しない。

≪新興国は違う世界、それも、大幅に異なる世界である。

 最も顕著な違いは、顧客の数がはるかに多く、一人ひとりが使える額がはるかに少ない、という点である。≫

 インドや中国などはマイクロ消費者がいるメガ市場・・先進国のように10ドル費やせる人が1人いるときと、

 1ドル費やせる人が10人いるときとでは、ウォンツとニーズが大きく異なる。



≪私たちは、途上国で最初に採用されたイノベーションをすべて「リバース・イノベーション」と呼んでいる。≫

 歴史上、イノベーションは、まず富裕国で始まるものだった。

 しかし、近年では、リバース・イノベーションの実例が多くみられるようになった。


≪リバース・イノベーションは、それを理解している国や企業には富や力を再分配する可能性を秘めているが、
 
 理解していない国や企業は衰退していくかもしれない。≫

≪なぜなら、リバース・イノベーションは途上国で最初に採用されるが、話はそこで終わらないからである。

 グローバル経済は濃密に結び付いている。

 リバース・イノベーションはグローバルな影響力を持ちうる。

 最終的に、貧困国から途上国へと移転していく可能性があるのだ。≫




≪・・リバース・イノベーションは、日本のグローバル企業にとって大きな挑戦である。
 
 大きな組織が、途上国から富裕国へ、そして富裕国から途上国へと、両方向に同時にイノベーションを移転させる

 のは、けっして容易なことではない。

 それを実践するためには、白紙の状態から、顧客ニーズを見きわめる方法を再検討し、新しい製品やサービスを開発し、

 イノベーションのためのチームを整備しなくてはならない。≫




 ところで、

 現在、世界でもっとも先進的な病院はどこにあるか?
 
 それは、インドのナーラーヤナ病院である。

 心臓バイパス手術を専門としており、

 アメリカの平均よりも純利益率は上回り、質の面でも世界クラスを誇る。
 
 その成功の原因は、インドの人件費が安いことだけではなく、

 プロセス・イノベーションにある。

 フォードのT型モデル以後に工業分野で広まったコンセプト、

 標準化・労働者の専門家・規模の経済・ライン生産方式などを、

 心臓外科の分野に適用することで、

 手術1回あたりのコストを大幅に引き下げた。

 その結果、アメリカ人向けにアメリカの治療費の半分以下で医療サービスを提供しようとしている。






≪リバース・イノベーションとは、簡単にいうと、途上国で最初に採用されたイノベーションのことだ。

 こうしたイノベーションは意外にも、重力に逆らって川上へと逆流していくことがある。≫

 従来、イノベーションは先進国で始まるものであったし、

 また、経済と技術の両分野で富裕国に追い付こうとし、遅れて進化のプロセスを歩んでいる途上国にとっても、

 富裕国から欲しいものをただ輸入すればよいのだ、と考えても当然であった。



 リバース・イノベーションの機会を考える上で、富裕国と途上国との間にある5つのニーズのギャップがある

ことを知る必要がある。

1.性能のギャップ

 ベスト、ベター、グッドという典型的な製品ラインがあるとする。グッドな製品は80%の価格で80%の性能、

 ベターな製品は90%の価格で90%の性能を、ベストの製品は100%の価格で100%の性能を提供する。

 先進国の開発者は、途上国のニーズに対処するため、グッドな製品に少し手をいれ、70%の性能を70%の価格で

提供しようと考える。しかし、これでは小さな市場しかない、といいます。

 途上国の人が望むのは、超割安でそこそこ良い性能を持つ画期的な新技術である。

 つまり、わずか15%の価格で、50%のソリューションを望んでいる。

 これを実現するほどの大きな設計変更は、既存品からスタートしては不可能である。

 まったく新しいソリューションを、一から考える必要がある。


2.インフラのギャップ

 富裕国では、インフラが広範に行き届いている。一方、途上国はそうではない。

 普通に考えると、富裕国の発達したインフラは強力な資産となる。

 しかし、途上国の国々の方が、世界一のインフラを持つ例が、すでにいくつかなる。

 その理由は、富裕国が革新的なインフラ技術を採用して新しいシステムをつくろうとすると、

 既存のシステムと互換性を持たせなくてはならなくなり、大きな制約を受ける。

 一方、途上国では、過去の遺産に邪魔されることなく、画期的な技術へと一足飛びに進展する柔軟性がある。

 電話、携帯、モバイル・バンキング、スマホ決済等々・・


3.持続可能性のギャップ

 世界経済が成長するにつれて、経済活動と環境問題の衝突は深刻さを増す一方である。

 中国の大気汚染のひどさはニュースで頻繁に取り上げられるが、

 そのための対策として、電気自動車の普及が急速に進んでいる。

 つまり、途上国が経済成長を持続するためには、「地球にやさしい」「環境にやさしい」ソリューション

 であることが求められる。


4.規則のギャップ

 富裕国では、過去の経済環境や文化的、法的な伝統によった規制システムが整備されることで、

 市場の公正性や、消費者や職場の安全が保たれてきた。

 その一方、規制システムは、複雑になり、技術的に時代遅れになり、

 イノベーションに対する無用の障害になりかねない。
 
 それに対して、途上国では、規制による影響を受けないため、より早くイノベーションが進展する可能性がある。
 

5.好みのギャップ

 国ごとに、食習慣が異なり、味覚・習慣・儀式などの豊かな多様性がある。


 つまり、富裕国と途上国には、大きな違いがある。


 次には、これらのギャップの解消傾向に目を向ける必要がある。

1.性能のギャップの解消

 15%の価格で50%のソリューションを提供することは、80%以上のソリューションでないと

 通用しない富裕国ではほとんど魅力がないかもしれません。

 しかし、新しい技術は、驚くべき速度で進化しており、50%のソリューションはほんの2、3年で、

 90%のソリューションになるかもしれない。

 さらに、富裕国においても、かつてないほどの緊縮予算により、一定の条件下であれば、80%未満の

 「そこそこ良い」性能も受け入れやすくなっている。


2.インフラのギャップの解消

 過去のインフラ資産の貧弱な途上国においては、一からつくるので、その時点での最新技術に投資することができる。
 

3.持続可能性のギャップの解消

 深刻な環境問題に直面している途上国は、廃棄物処理、持続可能な農業、浄水等の多様な分野で、

 新しい環境にやさしい産業に向けた、インキュベーターとなる可能性がある。


4.規則のギャップの解消

 既得権益者がいて、規則にがんじがらめになっている富裕国に対し、

 途上国は富裕国を一気に飛び越えることができる。

 その一方、富裕国側の規制も進化していき、ギャップがなくなる頃には、

 イノベーションが規制を通過できるようになる。


5.好みのギャップの解消

 好みのギャップが解消されていくと、当初は新興国向けだったイノベーションが

 富裕国にもたらされるようになる。


 つまり、ギャップの解消は、リバース・イノベーションを加速させることにつながる。




 
≪・・先進国の多国籍企業、特に大きな成功をおさめてきた企業は、いまだに新興国市場で

 苦戦している。

 それはなぜか。

 答えは簡単で、それらのグローバル企業は過去にとらわれているため、どうしても偏った考え方を

 してしまうからである。≫

 従来の≪グローカリゼーションは、国境を越えたマイナーチェンジには対応できるものの、

 富裕国と貧困国のギャップを解消するまでには至らない。≫


 リバース・イノベーションは、製品のイノベーションだけではない。
 
 リバース・イノベーションは、多くのビジネスモデルのイノベーションである。

 つまり、新しいプロセス、新しい協力関係、バリューチェーンの再構成が求められる。

 商取引のイノベーション、市場参入戦略におけるイノベーションも必要かもしれない。

 さらにそれは、プラットフォーム(基礎部分)のイノベーションであることも多い。






<目次>
【第1部】 リバース・イノベーションへの旅
第1章 未来は自国から遠く離れた所にある
第2章 リバース・イノベーションの5つの道
第3章 マインドセットを転換する
第4章 マネジメント・モデルを変えよ
【第2部】 リバース・イノベーションの挑戦者たち
第5章 中国で小さな敵に翻弄されたロジテック
第6章 P&Gらしからぬ方法で新興国市場を攻略する
第7章 EMCのリバース・イノベーター育成戦略
第8章 ディアのプライドを捨てた雪辱戦
第9章 ハーマンが挑んだ技術重視の企業文化の壁
第10章 インドで生まれて世界に広がったGEヘルスケアの携帯型心電計
第11章 新製品提案の固定観念を変えたペプシコ
第12章 先進国に一石を投じるパートナーズ・イン・ヘルスの医療モデル
終章 必要なのは行動すること
付録 リバース・イノベーションの実践ツール
ネクスト・プラクティスを求めて
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